美作大学・美作大学短期大学部紀要
2006,Vol. 51,25〜31
論  文
ユニバーサルデザインポロシャツに関する研究
A study of universal design polo shirt
小山京子

緒  言

2007年からの「団塊の世代」の大量リタイアを目前に控えた現在、高齢者の生活の質をさらに高めるために、体型研究や衣服についての研究が多く進められつつある1)4)。一方で、「誰をも受け入れるデザイン」であるユニバーサルデザイン衣服の研究・開発も徐々に進められてきている5)6)ものの、未だ十分であるといえないのが現状である。
 筆者も「肌ざわりよく、着脱しやすい」衣服として、高齢者用にポロシャツ(通称ミポロ)を研究・開発し7)、前報ではユニバーサルデザインポロシャツの研究・提案を行った8)。また、下衣であるユニバーサルデザインパンツについても研究を行ってきている9)10)
 そこで、これらの研究をふまえ、広範囲にわたる年代の人たちが着用できるユニバーサルデザインポロシャツ(以降UDポロシャツとする)を開発し、その実用性の研究を目的に本研究を行った。


方  法
  1. 前報8)で発表したミポロ8号のアンケート結果に基づいて改良型ミポロ8号を製作し、2005年7月に32歳から68歳までの女性15人に提示して意見を聴取した。
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  3. その結果を用いて新しいUDポロシャツ(ミポロ9号)を作製し、2005年9月から10月にかけて30歳から68歳までの女性51人を対象に約3週間着用してもらい、郵送法によるアンケート調査(無記名の質問紙法)を実施した。その結果の評価における分析およびKJ法11)による分析を行い、目的とするUDポロシャツの要因を抽出した。
  4.  
  5. カラーは、前報のアンケート結果にも希望があり、若年層の嗜好も考慮して白・黒の2色とした。
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  7. 製作は、岡山県北の縫製業者に依頼した。


結果ならびに考察
1.改良型ミポロ8号製作までの経緯

(1)前報のアンケート結果に基づいた改良点を表1に、その製図を図1に示す。これを改良型ミポロ8号とした。

表1 アンケート結果による改良点


図1 ミポロ製図

(2) この製図を基に改良型ミポロ8号を製作し、女性15人に提示後着用してもらって意見を聞いた。それらの意見を表2、改善点を表3に、製図(ミポロ9号)を図1に示す。

表2 着用後の意見、表3 ミポロ9号改善点



2.ミポロ9号の製作及びアンケート調査の実施

(1) 改良型ミポロ8号をさらに改善したミポロ9号を製作した。その写真を図2に示し、使用布地の素材及び性能試験結果を表4に示す。素材は、ミポロ4号から8号まで使用した特殊構造糸を用いた布地に変えて、裏綿、表ポリエステルの新しい布地を選択した。新布地の単位当たり質量は以前に比べ12.8%軽くなり、伸張率のウェールは少し値が低くなったが、コースは2倍以上と横への伸びが大変良くなった。また、伸張弾性率、剛軟性もウェール、コース共に新布地の方が良くなり、伸びた布地の戻りや柔らかさも増している。襟、袖口カフスには綿50%ポリエステル50%の混紡ニット編み地を使用し、襟幅は7cm、長さは柄の都合で0.3cm長い41.3cmとした。

図2 ミポロ9号

表4 ポロシャツ布地の素材、性能

(2)アンケート依頼は新聞紙上で行い、協力者から材料費の一部として1,000円徴収した。岡山県内在住の女性にモニター協力を依頼し、希望カラーを着用してもらった。

(3)アンケートの質問に対しての評定平均値は、「短い、きつい、小さい、不必要」を1、「ちょうどよい、どちらでもよい、どちらともいえない」を2、「長い、ゆるい、大きい、必要」を3として算出した。


3.アンケート調査結果

調査対象者の平均年齢は50.9歳で、年代別の人数を表5に示す。平均身長は156.7cm(145cm〜165cm)、胸囲84.9cm(78cm〜100cm)、胴囲68.0cm(60cm〜82cm)であり、着用カラーは白21人、黒30人であった。また、着用回数は5.9回(1回〜28回)、洗濯回数は4.4回(1回〜20回)であった。着用場面として主なものは家庭着が多かったが、庭仕事、ウォーキング、スポーツ、買い物、旅行、仕事等があげられた。

表5 年代別人数

アンケート調査結果の評定平均値を図3に示す。「上衣丈」は評定平均値2.13と「ちょうどよい」の評価に近く、「袖丈」は2.01と「ちょうどよい」であった。これら二つの項目共、身長が156cm以下の人に「長い」が多く見られ、157cm以上の人に「短い」が多く見られる。身長が「丈」の項目に大きく関与している事は、身長と袖丈の相関係数が0.755と高い12)ことからもうかがえる。「脇のゆとり」については2.15の評価であったが、「ゆるい」と答えた9人中の4人までが30歳代であり、40歳代が3人であった。また、胸囲82cm以下の人の3分の1強が「ゆるい」の評価であるが、87cmの胸囲でも「ゆるい」と答える等、「丈」に比べて「ゆとり」は好みがあることが分かる。

図3 アンケート調査結果の評定平均値

「前明き」の評定平均値は2.20で「やや長い」評価であったが、明きの長さをミポロ8号より5cm短くした為、8号の評価2.67よりかなり改善された。「釦の大きさ」の評価は2.05と「ちょうどよい」であり、これも8号の1.8cmを1.5cmにした結果が表れているものと考える。
 また、「ポケット」の必要性は2.25と「やや必要」の評価で、「ロゴマーク」は2.02の「どちらともいえない」であった。「スリット」の評価は2.78と、かなりの人は必要性を感じており、「カフス」も2.37と必要とする人は多い。また、今回始めてカフスと襟に0.7cm四方の市松模様の柄をアクセントとして使用したが、「カフス柄」2.18、「襟柄」2.57と襟の方が値が大きくなっており、カフスより必要と考えている人が多かった。
 「着脱の状況」の評定平均値は2.90、「肌ざわり」は2.86、「着心地」は2.95と、衣服着用の基本である機能面については大変良い評価であった。これらは、横伸びの良い布地に変えたことや、両脇にスリットがあることなどもその要因の一つであると考える。しかし、「デザイン」に対する評価は2.32と「やや良い」とされたが、今後さらにより良いUDポロシャツを目指すためには、デザイン面において再考する必要性があると思われる。

4.KJ法による分析

アンケート用紙に自由記述欄を設けて着用感想を記入してもらい、これらをKJ法により分析をした。記入された記述から196枚のカードを作り、7つのカテゴリーに分けた結果を表6に表す。
 カテゴリーAの「色・柄」においては、前報同様好みの色の希望があった。今回新しく襟とカフスに入れた市松模様については概ね好評であったが、一部に「少しくどい」等の嫌悪感もあった。
 カテゴリーBの「着脱」は、前明きを8号より5cm短くした為、「長すぎる」とあげたのは1人で、着脱の良さにびっくりしたり、女性にとって着脱の際に気になる髪の乱れや化粧が付かないことがあげられており、今後もこういった点をミポロのポイントとしてあげていきたいと考える。
 カテゴリーC「素材・着心地」は、裏綿の素材を使用したため「肌ざわり」「着心地」共に良好であったが、「綿100%でなければ着ない」という人にとっては、表面にポリエステルを使用していることへのこだわりがあったようである。「放湿性が悪い」「吸湿性や通気性はどうか」という意見もあり、今後はそれらについても検査を行っていきたいと思う。また、釦が取れたり縫い目のほころびがあげられたが、縫製にも細やかな心遣いが必要であると考える。
 カテゴリーDの「デザイン」には35の項目があげられ、関心の高さがうかがえる。家庭着やスポーツウェアーとしての着用なら良いが、「外出着には向かない」「若者には向かない」「野良着のよう」等の意見があった。一方で「中年でもスッキリ着こなせる」「楽に楽しく着た」という感想もあり、デザインの好みは最も個人差が大きい。「ロゴマークに地域性を」「釦を高級感のあるものに」に対しては、今後のミポロ製作において検討していきたいと思っている。
 カテゴリーEの「袖」については、ラグラン袖に対する評価が「着やすい」「ゆったりしている」「肩のずれがない」と高く、反対の意見はなかった。また、市販されているポロシャツよりややゆるめのカフスも、「ゆるい」という意見がある一方で「しめつけ感がない」等、袖口を上下する場合においては好評である。
 カテゴリーFの「洗濯」は、表面にポリエステルを使用していることもあり、大多数の人が「しわにならない」「乾くのが早い」「アイロンかけが不要」をあげた。しかし、「しわが多い」「縮んだ」の意見もあったことは、各家庭での洗濯の状況が異なっていることが要因の一つではないかと考える。洗濯後「ゴワゴワ感がなくなった」「ゴワゴワ感が増した」の感想もあり、着用者の個人差もうかがえる。
 カテゴリーGの「ユニバーサルデザイン」においては、「デザイン」と「機能性」の調和があげられ、「広告をしっかり」「男性用も」等今後のミポロ開発へ向けての提案もあった。

表6 KJ法によるミポロ9号の感想の分類

 


要  約

 高齢女性用として研究、開発してきたミポロを、ユニバーサルデザイン衣服として着用することができるポロシャツとして開発することを目的に研究を行っているが、今回の研究で次のような知見が得られた。

  1. 今回始めて襟とカフスに市松模様を入れた。「襟柄」の評価はかなり高かったが、「カフス柄」については、今一度考慮する必要があると考える。今までの無地に比べてスポーティな感じになり、外出着として着ることを少しためらうような結果になった。
  2. 前明きは、ミポロ8号より5cm短くしたが、横方向に伸びの良い布地を使用したこともあって着脱に問題はなかった。それよりも、かえって「髪が乱れない」「化粧が付かない」等、新しい発見があった。
  3. 素材を裏綿、表ポリエステルの布地に変えたことにより「肌ざわり」「着心地」共に良好で、洗濯後も「しわにならない」「乾きが早い」等、一部反対意見もあったが、概ね新布地に変えた効果があった。また、今後のユニバーサルファッションに大きく係わってくると思われる「軽さ」の問題も、ミポロ8号が263g、9号229gと軽くなっている。
  4. 釦は、大きさに関しては1.5cmで良いが、材質は機能性・審美性も考えた上で選び直す必要があると考える。
  5. 縫製に対して、「釦がとれた」「縫い目がほころびた」等の問題があげられた。縫製業者の問題ではあるが、完成品のチェックをきちんと行わなければならない。
  6. 今回最大の問題はデザインで、「楽に楽しく着ることができた」反面、「外出着には向かない」「若者には向かない」等多くの意見があった。少しでも多くの人を対象にしたUDポロシャツを目指すためには、デザインの再検討を考えなければならない。
  7. ミポロ9号をユニバーサルファッションとして認知してもらうためには、ユニバーサルデザインのポイントを掴んで、多くの場所や場面での普及が必要となってくる。
 
以上の知見を基に、今後もより望ましいUDポロシャツ製作のための提案を行っていきたい。
 今後のユニバーサルデザインを考える上においては、今回指摘のあったように「機能性」と「デザイン」の調和を考えていかなければならない。ミポロ9号においては「機能性」においてはかなりの評価があったように思えるが、「デザイン」においてはワンポイントのロゴマークも含め、今一度検討の必要があると考える。また、ユニバーサルファッションにおいては「体型、パターン同様、衣服素材はきわめて重要な役割を果たしている」とされており13)、今後の新素材開発にも期待している。
 5年に渡り研究、開発を進めているミポロを一人でも多くの人に着用してもらうためには、価格の問題も生じてくる。今回のアンケートで適当な価格について尋ねたところ2,986円であった。この金額が妥当かどうかについても研究を重ね、新しいユニバーサルデザインミポロを開発していきたいと考えている。

謝  辞

この研究を行うにあたり、ご協力くださいました美作大学技術交流プラザ繊維分科会の皆様に厚くお礼を申し上げます。


引用文献

1)渡邊敬子、松山容子、古松弥生(2001)高齢女性用上衣設計を目的とした体幹上部体表展開図の解析、日本家政学会誌52.(10)963-972

2)筒井由紀子(2003)高齢者の衣服、繊維製品消費科学44.(2)74-77

3)岡田宣子(2004)高齢者服設計のための基礎的研究−脱ぎ着しやすい衣服ゆとり量−、日本家政学会誌55.(1)31-40

4)岡田宣子(2005)高齢者の身体状況と被服に求められる要件の加齢変化、日本家政学会誌56.(6)7-12

5)田中直人、見寺貞子(2002)「ユニバーサルファッション−だれもが楽しめる装いのデザイン提案」中央法規出版、東京

6)南涼子(2005)ユニバーサルファッションにおける色彩の役割、繊維製品消費科学46.(1)21-25

7)小山京子、高山真佐子(2002)高齢者の日常着の研究−女性用ポロシャツ−、美作女子大学、美作女子大学短期大学部紀要47.37-44

8)小山京子(2005)高齢者の日常着に関する研究−高齢者衣服をユニバーサルデザインに−、美作大学、美作大学短期大学部紀要50.23-30

9)小山京子(2004)ユニバーサルデザインパンツの研究と製作 その1、美作大学・美作大学短期大学部地域生活科学研究所所報 増刊号22-24

10)小山京子(2005)ユニバーサルデザインパンツの研究と製作 その2、美作大学・美作大学短期大学部地域生活科学研究所所報2.31-34

11)川喜田二郎(1967)「発想法」中公新書、東京

12)三吉満智子(2000)「服装造形学−理論編I」文化学園教科書出版部、東京

13) 大塚美智子(2005)ユニバーサルデザインのための素材設計、家政学会被服構成部会誌26.23-24

(2005年12月1日 受理)

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