美作大学・美作大学短期大学部紀要
2005,Vol. 50,23〜30
論  文
高齢者の日常着に関する研究
-高齢者衣服をユニバーサルデザインに-
A Study of Daily Clothes for the Elderly
-To Dress Clothes for the Elderly as a Universal Design-
小山京子

緒  言

急速に人口の高齢化が進展している中で、身近な生活環境の改善が急がれている。高齢者の生活を活性化させ、被服により生活の快適性や自立性を高めていくことを目的として、前報では高齢女性のポロシャツの提案と、個別対応衣服の提供を行った結果を報告した1)
 近年、多くの研究者によって高齢女性における衣服の適合、設計の研究や2)5)、衣生活行動に関する研究など6)8)が行なわれてきている。そして、最近は少しずつではあるが、高齢者衣服を越えてユニバーサルファッションに対する研究も始まっている9)が、まだ十分とはいえないのが現状である。
 ユニバーサルデザインとは、「誰をも受け入れるデザイン」つまり「すべての年齢や能力の人々に対して可能な限り心地よく、そして使いやすい製品や環境を提供するデザイン」と言われており10)、年齢や性別によらず多くの人たちにとって便利なものであることはよく知られているところである。
 そこで、これらの事柄をふまえて、高齢者のみならずユニバーサルデザイン衣服として、広範囲の年代の人たちが着用できるポロシャツを開発することを目的として本研究を行った。


方  法

1 前報で発表したポロシャツ(通称ミポロ4号から7号)について、ユニバーサルファッヨン協会(UNIFA)の商品研究会で、2003年6月に意見収集を行ってもらった。また、同年8月、UNIFAのデザイナーであるK氏から直接教示を得た。
 2 これらを基に改良した新しいミポロ8号を、色・柄を変えて7着製作した。
 3 ミポロ8号を20歳から56歳までの女性14人に提示して意見を聴取し、KJ法11)により分析を行った。
 4 その結果を用いて作成したアンケート調査を、2004年7月に、18歳から59歳までの女性63人を対象に行い、その結果をまとめ、目的とするポロシャツの要因を抽出した。


結果ならびに考察
1.ミポロ8号製作までの経緯およびアンケート調査の実施

(1)UNIFAの商品研究会(14人)によってあげられた改良点および改善点と、デザイナーK氏の教示を合わせたものを表1に示す。これらの中から特に重要と思われる1から5までの5箇所を改善した。

表1 提案のあった改良点及び改善点


(2)ユニバーサルデザインのポロシャツということで、高齢女性用として製作した4号から6号までのポロシャツより、身長・袖丈の差、好みを考慮に入れ、着丈、袖丈を5cmずつ長くした。その製図を図1に示す
図1 ミポロ8号製図
図1 ミポロ8号製図

(3)この製図を基に、今回は色・柄に重点を置いて7着製作した。7着の色・柄、素材等を表2と図2に示す。

表2 ポロシャツの色・柄、素材、編み


図2 7着のミポロ8号
図2 7着のミポロ8号

(4)4番、5番、7番の襟はポロ襟ではなく、4番は身頃と同じ布を使用し、5番、7番は綿ブロードを用い、ミシンステッチをかけた。また、4番と7番は1.5cmの釦4個を使用した。
(5)製作したポロシャツ7着を女性14人に提示して意見を聞き、61枚のカードを作った。それらのカードをKJ法により10個のグループに分けた。グループ化の例として「前明き」を図3に示し、この分析によって得られた結果を表3に示す。

表3 KJ法によるグループ化   図3 KJ法によるグループ化の例

(6)この分析結果を用いて、三段階評価によるアンケート調査を行った。対象者には7着を提示し、好みのものを1着ないし数着着てもらった。また、釦の大きさについては、直径1cm、1.3cm、1.5cm、1.8cm、2.1cmの5種類の釦を布地に取り付けて、大きさを見てもらった。 アンケートの質問に対しての評定平均値は、「短い、きつい、小さい、不必要」を1、「ちょううどよい、どちらでもよい」を2、「長い、ゆるい、大きい、必要」を3として算出した。
 また、年齢とサイズによる評価の違いをみるため、10歳代(19人)、20歳代(23人)を若年層、30歳以上(30歳代6人、40歳代8人、50歳代7人の計21人)を中年層とし、着用サイズのS、M、Lサイズにおける傾向を分析した。
2. アンケート調査結果 

 対象者の平均年齢は29.0歳で、常に着用している上衣のサイズはSが6人で9.5%、Mが35人で55.6%、Lが22人の34.9%であった。
 色・柄の好みの結果を図4に示す。今回提示した7色は、PCCSのトーン分類でみると明度、彩度ともにほぼ全体に分布している。色・柄で一番好まれたのは6番の黒、白ボーダー柄の15人で22.0%、二番目に好まれたのは2番のライト・オレンジと、7番のオレンジに白、黄、赤などのボーダー柄で11人、16.2%であった。
 嫌いな色・柄で特に多かったのは5番の茶系の濃淡に黒、白のボーダー柄の20人で30.8%であったが、「嫌いな色・柄はない」も17人の26.2%あった。「好き」より「嫌い」が多かったのは、明度の低い1番のイエロー・グリーンと5番の茶系の濃淡に黒、白のボーダー柄であった。

図4 アンケート調査のの結果

 また、若年層に比べ中年層が嫌いな色としたのは、3番のライト・バイオレットと4番のライト・グレイであったが、ライト・バイオレットは、前報の高齢者対象のアンケートにおいて一番好まれた色であった。「女性はペール、ライトなど明るいトーンを好みやすい一方で、加齢とともにダーク、ダル、グレイッシュなどの低彩度のトーンが好まれるようになる」と言われている12)ことから考えて、本調査の中年層はちょうどその移行期にあると思われる。
 アンケート調査結果の評定平均値を図5に示す。「上衣丈」は評定平均値2.02で「ちょうどよい」との評価であり、「袖丈」の評価は1.85の「やや短い」評価であった。「ゆとり」については2.33の「少しゆるい」評価であったが、ミポロが高齢者用としてデザインされていたため、脇のゆとりが少し多かったものと思われる。「前明き」の長さは28cmと長いため、93.7%が「着脱しやすい」と答えたが、「長い」と答えた人が68.3%と多く、評価は2.67の「かなり長い」とされた。長いと思われる寸法の平均は9.5cmであった。釦の大きさは直径1.8cmと市販されているポロシャツよりかなり大きい釦を使用しているため、評価は2.22と「やや大きい」であったが、76.2%が「ちょうどよい」と答え、「小さい」と答えた人はいなかった。また、「胸ポケット」の必要性は2.23、「ロゴマーク」2.22、「脇の前後差」の必要性は2.12と、「必要」とする人が少し多い評価であった。
 年齢層による違いをみるため、若年層と中年層の評価の平均値の差の検定(t検定)を行った。「上衣丈」は若年層1.86、中年層2.33の評価でp<0.01の水準で有意差があった。同様に「袖丈」も若年層1.63、中年層2.29の評価となり、p<0.01の水準で有意差が認められた。また、「ゆとり」もp<0.05の水準で有意差があった。特に中年層においてゆとりが多いとされたことは、若年者に比べて体にフィットしたものを好む傾向にあるものと考えられる。
 次に、サイズによる違いをみるため、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ着用者の「上衣丈」「袖丈」「ゆとり」について評価の平均値の差の検定( t検定)を行ったが、Sサイズはサンプル数が6人と少なく、今回の検定からは除いた。評価の結果を表4に示す。サイズによる違いの検定も「上衣丈」p<0.05、「袖丈」p<0.01の水準で有意差が認められた。若年層にLサイズ着用者が多い(若年層15人、中年層4人)のでこのような結果になったと思われるが、それぞれの年齢層の身長・袖丈の寸法の違いや、若年層は袖丈の長いものを好む傾向にあることなども、その一因としてあげられよう。
図5 アンケート調査結果の評定平均値 表4 サイズによる評価


3. KJ法による分析

アンケート用紙に自由記述欄を設けて記入してもらい、KJ法により分析をした。
 これらの記述から139枚のカードを作り、8個のカテゴリーに分けた結果を表5に示し、カテゴリー毎のカード数の比較を図6に示す。カテゴリーGの「ミポロ発見」では、「始めてミポロを知った」「しっかり広告しては」「祖父母にプレゼントしたい」等ミポロに対する新しい提案があった。また、カテゴリー毎の数値では、カテゴリーDの「素材・着心地」が27枚と一番多く関心を持たれ、カテゴリーCの「着脱」が24枚、カテゴリーEの「ディティール」20枚と続いている。これらの事柄から、今後のミポロに期待されていることは、最初からこだわっている着心地のよい素材を用い、着脱の容易さを備えた上で、細かなディティールにも気を配ったものを製作していくことであることが確認できた。

表5 KJ法によるミポロ8号の感想の分類
  第一分類 分類されたカテゴリーとその名称
1 黒や白があればよい カテゴリーA(色・柄)
2 青・赤などの単色がよい
3 濃い青・緑・黄・ストライプ柄・ドット柄
4 青・ベージュ・グレーの色が欲しい
5 紺や黒など単色で落ち着いた色の生地を
6 原色も欲しい
7 蛍光色があってもよい
8 透けない色がよい
9 明るい色があれば欲しい
10 前明きをファスナーにしてリングをつけるとよい カテゴリーB(前明き)
11 釦でなくとめられるものもよい
12 前明きの長いのは高齢者用にはよい
13 脱ぎやすいが前明きが少し浅い方がよい
14 前明きは少しあきすぎかなと思う
15 高齢者対象だと「かぶり」が少し気になる
16 前明きを下まで開いた方が着脱は楽になるのでは
17 釦の大きさはちょうどよい
18 片手でも釦をとめることが出来た
19 素材がツルツルしている方がとめやすい
20 釦の間隔が広い
21 着やすい カテゴリー C(着脱)
22 大きいので着やすい
23 着やすかったので高齢者にはよいと思う
24 前明きが広いので着せたり脱がせたりしやすい
25 前明きが長いので着脱しやすい
26 着脱がとても楽
27 ゆったりと着脱できる
28 片手で着脱ができる
29 上衣丈が長いと着脱がしにくい
30 脱ぐ時少し脱ぎにくさがあった
31 伸びる生地がよい カテゴリーD(素材、着心地)
32 ストレッチ素材にするとさらに着やすいのでは
33 普通のポロシャツの生地も欲しい
34 素材は汗をよく吸い取るものがよい
35 綿100%のものより汗を発散させる作用のある化学繊維混紡が軽くてよいのでは
36 綿100%のものを着たい
37 着心地がよい
38 素材もよく気持ちよい
39 風通しが悪い感じがした
40 肌触りがよい
41 手触りが良い
42 襟は柄ものの場合同色無地がスッキリする カテゴリーE(ディティール)
43 身頃と衿を色・柄(同系色)違いにすればおしゃれ感が増すのでは
44 襟を別布にすると感じがよい
45 ラグラン線を利用した立ち衿つづきの衿はおしゃれである
46 半袖があってもよい
47 長袖もよいし半袖もあるとよい
48 七分袖も希望
49 夏でもクーラーがきいているので長袖でちょうどよい
50 袖口もしぼっていなくて袖まくりしやすい
51 袖口にもう一工夫欲しい
52 袖口はもう1cmずつゆとりがあると楽である
53 袖口が拘縮の人はもっと広くないと通りにくい
54 この形だと寸胴に見える カテゴリーF(デザイン)
55 脇をしぼっていないのでダボダボした
56 二の腕や脇も大きい
57 ゆとりがあってすごしやすい
58 上着を中に入れる人は前後差がある方がよい
59 165cmの身長でも背中が見えなくてすむ(Mサイズだと見える服が多い)
60 意味を持たせないロゴマークならあってもよい
61 ロゴマーク無しのほうが好きだ
62 襟だけにポイントのデザインをつけたらかわいい
63 おしゃれっぽくないのでかわいいデザインにして欲しい
64 着脱しやすい服でデザインもステキなものがあればよい
65 ラグラン袖もあまり気にならない
66 ポロシャツは楽でよい
67 ポソシャツは好きでない
68 ミポロのことを初めて知った カテゴリーG(ミポロ発見)
69 ポロシャツに対するイメージがよい方に変わった
70 よい商品だと思う
71 着心地のよさなどしっかり広告しては
72 農作業とかよく動くことによいと思う
73 仕事がしやすい
74 部屋着として着られそう
75 布が柔らかいので寝るときに使えば寝やすい
76 祖父母に美作大学のミポロだよとプレゼントしたい
77 おじいちゃんおばあちゃんには着やすい服だ
78 高齢者や障害者だけでなく私たち(20歳)でも着られるデザイン カテゴリーH(UD)
79 高齢者には着やすいデザインだと思うがUDとしてはどうか
80 UDとしては柄を外着っぽく変えるとよい
81 若者向きではない
82 襟の形釦のサイズなど選択できるとよい

図6 カテゴリーごとのカード枚数
図6 カテゴリー毎のカード枚数

要  約

高齢女性にとって性能的・心理的に着心地のよい衣服として開発したミポロを、高齢女性のみならずユニバーサルデザインの衣服として、若年層や中年層にも着用することができるポロシャツの開発を目的として研究を行った。その結果、次のような知見が得られた。

  1. 色・柄の好みは明度より彩度の高いものが好まれたが、嫌いな色として明度の低い色があげられている。しかし、若年層に比べ中年層は明度の高い色も嫌いな色としてあげている。
  2. 上衣丈は「ちょうどよい」とされたが、若年層は少し短く感じ、中年層はやや長く感じている。これは、若年層の身長が中年層に比べて高くなっていることによることが多いと思われる。
  3. 袖丈は「やや短い」とされたが、中年層は少し長いと感じている。これも、若年層の袖丈が中年層に比べ長くなっていることが要因の一つとしてあげられるが、好みの問題もかなり寄与しているものと考えられる。
  4. 前報のミポロは高齢者用として開発してきたため、脇、袖ぐりにやや多めのゆとりがあった。ユニバーサルデザインと考えるならば、可能な限りゆとりは削り、前明きは少し短くするのが好ましい。
  5. 釦の大きさは、前明きの長さにも関係してくるが、1.8cmを基本に考え、小さくても1.5cmとするのがよい。
  6. 胸ポケット、ロゴマーク、前後差は、今後もオプションで考えていかなければならないと考える。
  7. 着心地のよい素材を用い、着脱の容易さを備え、かつ細かなディティールにも気を使った新しいミポロを、あらたに9号として提案したいと考えている。
 
今後の課題として、次のことを検討したい。高齢者用に開発してきたミポロをユニバーサルデザインのミポロにするために研究を続けてきたが、10歳代から高齢者までの広範囲の年代の全ての人たちが満足するものにすることは、サイズ、体型、好み等に差があり困難な点もある。したがって、本研究において意識や体型等に変化があると考えられた事項を考慮し、30歳代以上から前期高齢者までをカバーすることのできるミポロを提案していきたい。


引用文献

1)小山京子、高山真佐子(2002)高齢者の日常着の研究−女性用ポロシャツー、美作女子大学・美作女子大学短期大学部紀要47.37

2)渡邊敬子、高部啓子、大村知子(1997)高齢女性における衣服の身体適合に関する意識、日本家政学会誌48.(10)893-902

3)渡邊敬子、松山容子、古松弥生(2001)高齢女性用上衣設計を目的とした体幹上部体表展開図の解析、日本家政学会誌48.(10)963-972 

4)筒井由紀子(2003)高齢者の衣服、繊維製品消費科学44.(2)74-77

5)岡田宣子(2004)高齢者服設計のための基礎的研究−脱ぎ着しやすい衣服ゆとり量−、日本家政学会誌55.(1)31-40

6)岡田宣子(2000)高齢者の衣生活行動の現状と要望点−衣服の調達と選択行動を中心としてー、日本家政学会誌51. (7) 595-603

7)上原真樹、松浦加恵子、小野木禎(2004)西宮市在住女性高齢者の着衣の調査研究−女子大生との外衣の色彩嗜好比較−、日本家政学会誌55.(7) 551-560

8)西藤栄子、中川早苗(2004)中高年女性のおしゃれ意識と規範意識、日本家政学会誌55.(9) 743-750

9)見寺貞子(2001)ファッションにおけるユニバーサルデザイン−高齢者・障害者の衣生活に求められる要因−、繊維製品消費科学42.(9) 559

10)日本ファッション教育振興協会(2002)「ユニバーサルファッション概論」日本ファッション教育振興協会、東京、42

11)川喜田二郎(1967)「発想法」中公新書、東京

12)近江源太郎(2003)「色彩心理入門」日本色研事業株式会社、東京、67

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